大規模言語モデルの定義と概要
大規模言語モデルとは何か?
- 近年の人工知能分野における主要技術。
- 人間の言語と同様のテキストを理解・生成可能。
- 大量のテキストデータ学習により、言語構造と知識を習得。
- 会話、翻訳、執筆、コード生成などで高い能力を発揮。
- GPT-4、Claude 3.5など、様々なモデルが存在。
大規模言語モデルの能力と応用
- 自然言語の理解と生成
- 機械翻訳
- 文章作成支援
- プログラムコード生成
- 複雑な推論
- 画像理解
大規模言語モデルの発展の歴史
早期研究:単語埋め込みから文脈モデルへ
- 単語埋め込み技術が登場。
- 単語間の関係をベクトルで表現。
- 文脈を考慮した柔軟な意味表現が困難。
- 2018年、文脈を考慮した単語埋め込みを実現。
- 双方向を用いた大規模データでの事前学習。
Transformerアーキテクチャの登場
- 2017年、GoogleがTransformerアーキテクチャを発表。
- 従来の1つずつ順番に計算するとは異なり、並列処理が可能。
- 長距離依存関係の捕捉に優れる。
- エンコーダとデコーダの積み重ね構造。
- 自己注意機構、フィードフォワードネットワークなどを含む。
GPTシリーズと生成モデルの台頭
- 2018年、OpenAIがGPT-1を発表。「事前学習+微調整」のパラダイムシフト。
- 2019年、GPT-2。より自然な文章生成能力。
- 2020年、GPT-3。1750億パラメータ、Few-shot learning能力。
- 2022年、ChatGPT。対話型インターフェースで一般ユーザーにも普及。
- 2023年、GPT-4。多様な能力向上、多様なモダリティ対応。
大規模言語モデルの技術的詳細と評価基準
モデルの構造とアーキテクチャ
- パラメータ:AIの中で使われるたくさんの数字。勉強することでこの数字が変わって、頭がよくなる。
- ニューラルネットワーク層:AIの考える力をたくさん重ねたもの。積み木みたいに何段も重ねて使う。
- Transformerアーキテクチャ:AIがすばやく正確に考えられるように作られた特別なしくみ。
- 自己注意機構:AIが文の中のすべての単語のつながりを考えて、どこが大事かを自分で決めるしくみ。
- 多頭注意機構:いくつもの自己注意を同時に使って、いろんな視点から文を考えるしくみ。
- フィードフォワードネットワーク:自己注意で考えたことを、さらに計算して新しい答えに変える部分。
- 活性化関数:AIがもっと色んな考え方ができるようにする特別な計算方法。
- 残差接続:AIが深くなっても勉強しやすいように、途中で前の情報を混ぜてあげる工夫。
- 層正規化:AIの各部分の答えがバラバラにならないように、まとめて整える方法。
- エンコーダ-デコーダアーキテクチャ:AIが入力された文章をいったん整理(エンコード)し、そのあとで別の形に作り直す(デコード)しくみ。
- デコーダのみアーキテクチャ:GPTみたいに、文章を作り出すことだけに集中しているAIの仕組み。
- 埋め込み層:言葉をコンピュータがわかる数字のグループに変える部分。
- 位置エンコーディング:言葉が文の中のどの場所にあるか、という情報をつけ加える工夫。
- Mixture-of-Experts:いろいろな「得意なAI」を組み合わせて、一番いい答えを出そうとする方法。
- SwiGLU活性化関数:AIがもっと上手に考えられるように工夫された新しい計算方法。
訓練と最適化
- 訓練データ:AIが勉強するために使うたくさんの文章や言葉。
- トークン:AIが文章を細かく分けたときの、一番小さな単位。たとえば、一つの文字や単語。
- 自己教師あり学習:AIが自分で問題と答えを作って、自分で勉強するやり方。
- 事前学習:いろいろな普通の文章を使って、AIがあらかじめたくさん勉強すること。
- 微調整:AIがもっと上手になるように、特定の問題やデータで追加で勉強させること。
- 指示微調整:人間が出した指示(こうしてほしいという言葉)に、AIがうまく従えるように練習させること。
- 人間のフィードバックによる強化学習:人が「この答えがよかった」「これはダメ」と教えて、AIがどんどんよくなるようにする方法。
- 勾配降下法:AIの中身(設定)を少しずつ変えて、正しい答えに近づけていく計算方法。
- 損失関数:AIの答えがどれだけ間違っていたかを数字で表すもの。
- 最適化アルゴリズム:AIをなるべく正しい答えが出るように調整していくための手順やルール。
- 学習率:AIが一度にどれくらい設定を変えるかの大きさを決める数字。
- バッチサイズ:AIが一度にまとめて勉強するデータの数。
- エポック:AIが全部の勉強用データを1回ぜんぶ学習すること。
- 過学習:AIが勉強用のデータだけを覚えすぎて、他の問題がうまくできなくなること。
- 正則化:AIが過学習しないように工夫する方法。
能力と性能に関する概念
- コンテキストウィンドウ:AIが一度に考えられる言葉や文字の数の上限のこと。
- ゼロショット学習:何も例を見せなくても、AIが自分の勉強だけで問題を解くこと。
- 少ショット学習:ほんの少しだけ例を見せてから、AIが問題を解くこと。
- インコンテキスト学習:AIがその場で出された文章をヒントにして考えること。
- 推論:AIが今まで学んだことを使って、答えを出すこと。
- 遅延:AIに質問してから答えが出るまでにかかる時間。
- 記憶と長期依存:AIが長い文章の内容を覚えておける力。
- 正解率:AIがどれだけ正しい答えを出せたかの割合。
- パープレキシティ:AIが次に来る言葉をどれくらい自信を持って当てられるかを示す数字。
- 涌現能力:AIが大きくなることで、新しくできるようになること。
- 幻覚:AIが本当じゃないことを間違って話してしまうこと。
- バイアス:AIが勉強したデータにかたよりがあって、考え方がかたよってしまうこと。
- ロバスト性:おかしな質問や変なデータが来ても、AIが間違えずに答えられる強さ。
- 整合性:AIの出す答えが、人が求めていることと合っているかどうか。
評価基準
- MMLU (Massive Multitask Language Understanding):多様な分野の知識と推論能力を評価。
- GPQA Diamond:博士レベルの科学問題解決能力を評価。
- GSM8K (Grade School Math 8K):小学校レベルの算数問題解決能力を評価。
- HumanEval:プログラミング能力を評価。
- ARC (AI2 Reasoning Challenge):科学的推論能力を評価。
開発状況:オープンソース vs クローズドソース
モデルアーキテクチャとイノベーション
- クローズドソースモデル:大規模な投資によるアーキテクチャの革新(例:GPT-4のMixture-of-Experts)。
- オープンソースモデル:コミュニティによる多様なアーキテクチャの探索(例:LLaMAシリーズのRotary Position Embedding)。
多様なモダリティの統合
- クローズドソースモデル:画像や音声などの多様なモダリティへの対応が先行。
- オープンソースモデル:LLaMA-Adapterなど、コミュニティによる多様なモダリティへの対応の試み。
長いコンテキストのサポート
- クローズドソースモデル:GPT-4など、長いコンテキストの処理を先行して実現。
- オープンソースモデル:位置エンコーディングの改良やスパースアテンションなどの手法による対応。
訓練と微調整
- データ規模と質:クローズドソースモデルは、より大規模で高品質なデータを使用。
- 訓練手法:クローズドソースモデルは、大規模な計算資源を用いた高度な訓練手法を使用。
- 整合性と安全性の微調整:クローズドソースモデルは、RLHFなどの高度な手法を用いてモデルの整合性と安全性を向上。
能力と機能
- 推論とツールの使用:クローズドソースモデルは、より高度な推論能力とツールの使用能力を持つ。
- オープン性:クローズドソースモデルは、API経由でのみ利用可能。オープンソースモデルは、自由に利用・改変可能。
2024年以降の主要な大規模言語モデルの比較
- GPT-4 (OpenAI): 多様なモダリティ対応、高い性能、閉鎖型。
- OpenAI o1/o3: 複雑な推論能力に特化、閉鎖型。
- Gemini 2.0 Pro (Google): 多様なモダリティ対応、高い性能、閉鎖型。
- Claude 3.5 Sonnet (Anthropic): 長いコンテキスト、高い性能、閉鎖型。
- Meta LLaMA 3シリーズ: オープンソース、多言語対応、大規模モデル。
- DeepSeek R1: 強力な推論能力、オープンソース。
- Moonshot Kimi K1.5: 多様なモダリティ対応、オープンソース、無料。
まとめ
大規模言語モデルは、急速な発展を遂げ、様々な分野で活用されています。オープンソースモデルとクローズドソースモデルの両方が存在し、それぞれに強みと弱みがあります。今後の発展としては、より高度な推論能力、多様なモダリティへの対応、そしてより効率的でオープンなモデルの開発が期待されます。倫理的な課題への対応も重要です。
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